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2011年02月09日

遺言について

法律上の遺言は、必ず書面にしておかなければなりません。民法で定められた一定の方式を備えていなければ無効になります。死に際に残す言葉は単にダイニングメッセージに過ぎず、法律上の効力は認められません。
その意味で世間一般の「遺言状」「書き置き」「遺書」等に法律上の一定の方式が備わっていなければ、法的効果のない手紙になります。

遺言の方式について

遺言を大別すると、
① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
③ 秘密証書遺言
④ 特別な場合の方式

自筆証書遺言

万年筆かボールペンで遺言の全文と日付と自分の氏名を遺言者本人がはっきりと自書し、これに押印したものでなければなりません。(民法第968条)
(印は実印でなくても構いません。)この条件を満たさない場合、無効になります。

公正証書遺言

法律の専門家である公証人が公証人法・民法等の法律に従って作成する公文書。証人2人以上が立ち会いし、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人の筆記した文章を遺言者・証人に確認させ、遺言者・証人が署名・押印した上で、公証人が「方式に従い作成した」旨を付記し、署名・押印します。
口がきけない者や耳が聞こえない者は通訳・筆談等により公正証書遺言を作成することができます。手話通訳人についても公証役場で相談できます。
遺言内容は原則として、口頭で聴くことになりますが、証書作成まで時間を要するので、事前に行政書士を間に介入させて、遺言者から遺言内容を聞き出し、その内容を公証人に伝えて案文を作成しておくことにより、スムーズに準備が進められます。

公正証書遺言の準備について

① 遺言の内容を明確にする。
② 遺言者本人の印鑑証明書(発行日から3か月以内)遺言当日には実印持参する。
③ 遺言者と相続人との関係を証明するもの(戸籍謄本・原戸籍謄本)が必要。
④ 相続人でない者に財産を遺贈する場合は、その者の住民票が必要。
⑤ 財産の内、土地建物のついては、固定資産税名寄帳の写し・登記謄本・権利証や納税通知書等があれば正確性が確保できます。
⑥ 遺言執行者(氏名・生年月日・住所・職業等)を決めておくと便利。
証人や財産をもらう人でも遺言執行者になれる。
⑦ 証人2名決めておくこと。遺言当日には住民票・認印を持参。
未成年者、遺言者の相続人、受遺者、それらの配偶者、親、孫などは証人にはなれません。適当な証人がいない場合、行政書士が証人になれます。
⑧ 遺言は、公証役場にて遺言者、証人2人と公証人が同席して行うが、遺言者が病気等で来られない場合は、自宅や病院で行うことも可能です。
⑨ 手数料は、遺言に係る財産の時価が目的価格となります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自己の管理下で作成した遺言書を公証役場へ持ち込み、公証人が遺言に間違いないと公証するもの。
① 遺言書を作成し押印する。ワープロで作成可能です。
② 封をして遺言書に押印したものと同じ印鑑で封印する。
③ 証人2人の立会のもと、遺言である旨・氏名・住所を公証人に口述する。
④ 公証人が日付等を書き入れ、証人と共に署名・押印する。
⑤ 口がきけない者は通訳・筆談等により口述に代えることができます。

法律上の遺言でできること

① 財産(遺産の処分)に関すること
② 婚外子の認知
③ 相続人の廃除・取消
④ 未成年者の後見人の指定
⑤ 人の身分に関すること
⑥ 祭祀承継のこと


これ以外のことは、遺言内容に入れても単なるメッセージに過ぎません。法的効果は発生しませんが、故人の遺志を尊重するかどうかは相続人の自由です。

遺言についての注意事項

① 公正証書遺言以外の遺言書を発見したときは、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。(怠った者或いは遺言を執行した者は5万円以下の過料)(民法第1004条・1005条)
② 遺言書があるのを知りながら、それを隠ぺい・破棄した者は相続欠格事由に相当し相続人の地位を失います。
③ 受遺者(遺言により財産をもらう者)が遺言者と同時又は先に死亡した場合、遺贈の効力はありません。(民法第994条)
④ 遺言の効力は、遺言者が死亡した時に発生します。(民法第985条)
生きている間に遺言者がその財産を処分したり、遺言の撤回、変更をすることは自由です。
⑤ 受遺者が1人で全部の又は1人で多くの財産を受贈したときは、他の相続人から遺留分減殺請求される可能性がある。(父母、祖父母等の直系尊属だけが相続人であるときは相続分の3分の1、その他の場合は、相続分の2分の1)但し、兄弟姉妹には遺留分権がない)(民法第1028条)。
その時に備えて対応を検討しておく必要があります。
⑥ 遺留分減殺請求権は、相続開始の時や自らの遺留分の侵害を知ってから1年経過すれば時効で消滅します。また、相続開始から10年経過すれば同様に時効で消滅します。(民法第1042条)
⑦ 相続人となるはずの者は家庭裁判所の許可さえあれば、相続開始前に遺留分の放棄ができます。(民法第1043条)

遺言執行者について

遺言執行者とは、遺言者がした遺言書の内容を実行することを職務とする人のことを言う。遺言執行者をきちんと遺言書の中で指定しておけば、遺言者の意思に基づき、遺言内容が実現されます。もし、遺言執行者が指定されていないときは、又は欠けたときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができます。(民法第1010条)

遺言執行者の地位

遺言執行者は相続人の代理人とします。
遺言執行者は必ずしも相続人の利益の為にのみ行為をすべき責務を負う訳ではありません。あくまで、遺言者の遺言内容に忠実に執行することが責務です。
利益相反関係にある相続人の中から遺言執行者を選任するよりも、行政書士等の法律実務専門家が中立的な立場で遺言執行者になった方が誠実且つ確実に遺言内容の実現が可能となります。

遺言執行者を指定のメリット

① ある程度知識がないと相続の手続きは概して煩雑で時間を要するので、通常の仕事をされている方には大きな負担になる場合があります。(負担と時間がかかります。)
② 相続に伴い利益を得る者同士(利益相反関係)で感情のもつれ合いが発生する可能性があります。(スムーズに進行しません。)
③ 相続人代表等、誰かが仕切り役をして遺産処理をしても金銭に関する事に対しては感情的なしこりが残る場合が多いです。(感情論が付きまといます。)
④ 法的実務に長けた遺言執行者を指定しておけば、感情論抜きに公平且つ誠実に遺言内容の執行が可能であります。(法的専門性・公平性・確実性が期待されます。)
⑤ 遺言書において遺言執行者を選任した場合、相続人は相続発生と同時に相続財産に対する管理・処分権を喪失します。(民法第1013条・相続人の処分権喪失)相続発生以後、相続財産に対する管理・処分権は遺言執行者が持ちます。(相続財産の安全管理)

遺言執行者の職務内容

遺言執行者は、遺産の管理やその他遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利と義務を持つ。(民法第1012条)

また、遺言執行者は民法第644条(受任者の注意義務)・645条(受任者の報告義務)・646条(受任者の受取物引渡等の義務)・647条(受任者の金銭消費の責任)650条(受任者の費用償還請求権)の規定にならい、委任を受けた者と同様の権利や義務を持ちます。

① 遅滞なく財産目録を調整し、相続人に交付する。(民法第1011条1項)
② 相続人の相続割合、指定相続人又は遺贈を受ける人(受贈者)などに対する遺産の分け方について遺言内容の通り執行します。
③ 相続財産の名義を相続人等の名義に書き換えます。(預貯金・不動産・株券・債権等)
④ 遺贈があった場合贈者に財産を引き渡します。
⑤ 土地などの相続財産を不法に占有している者への法的措置を講じます。
⑥ 認知の手続き・戸籍の届出手続きをします。(遺言者が遺言によって認知をした場合、遺言執行者は就任の日から10日以内に認知に関する遺言の謄本を添付して届出しなければならない。民法第781条2項・戸籍法第64条)
⑦ 相続人の廃除又は廃除取消の手続きをします。(被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思表示をしたとき、遺言執行者はその遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければならない。民法第893条)
また、廃除の意思表示を取り消したとき、同様に廃除取消の請求をしなければならない。民法第894条2項・893条)

遺言執行者の就職

未成年者・破産者は遺言執行者になれない。(民法第1009条)
指名を受けた遺言執行者が就任を引き受けたときは、直ちにその任務を行わなければならない。(民法第1007条)
遺言執行者は、その就職を拒絶することができる。その時は相続人に対して拒絶の意思表示をするが、その場合の罰則はない。

遺言執行者の解任

遺言執行者がその任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人はその解任を家庭裁判所に請求することができる。(民法第1019条)
正当な事由とは、遺言執行者が病気になったためとか、遺言執行者としての職務を遂行できなくなった事由が想定されます。

遺言執行者の辞任

遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。(民法第1019条2項)

遺言執行者への報酬

遺言者がその遺言に遺言執行者の報酬を定めたときは、その遺言書の定めによる。(民法第1018条1項但書)
家庭裁判所が定めたときは、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。(民法第1018条1項本文)

遺言執行者がその任務を第三者に行わせることについて

遺言執行者はどうしても困る事情がない限り、第三者(復代理人)にその任務を代わって行わせることはできない。行わせるには止むを得ない事由が必要。(民法第1016条1項)但し、遺言者が遺言の中で復代理人を選んでもよいと言っているときは別です。

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Posted by 北村國博法務行政書士事務所 at 19:49遺言について