2011年02月09日

成年後見制度について

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。(平成12年4月 介護保険制度と同時に始まった制度です。)

成年後見制度には、大きく分けると「法定後見制度」(後見、保佐、補助)と「任意後見制度」があります。判断能力の程度など、本人の事情に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。

成年後見制度について後見:精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が欠けているのが通常の状態にある人に適用。
保佐:精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な人に適用。
補助:軽度の精神上の障害により、判断能力の不十分な人に適用。

本人が既に判断能力が不十分な状態にある場合、本人又は配偶者・四親等内の親族の申立てによって家庭裁判所が適任と認める人を本人の保護者(成年後見人・保佐人・補助者)に選任する。また、成年後見等を開始された本人を「被後見人」・「被保佐人」・「被補助人」と言います。

保護・支援の内容

家庭裁判所によって、選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)は、本人の意思を尊重して、その心身の状態や生活状況に配慮しながら、
①本人を代理して契約等の法律行為を行います。
② 本人が自分で法律行為をするときに同意を与えます。
③ 本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消します。

成年後見等の役割・仕事内容

生活・療養看護
被後見人の介護契約・施設入所契約・医療契約等についての代理権を行使します。
被後見人の生活のために必要な費用を被後見人の財産から計画的に支出します。

財産管理
① 被後見人の財産を管理します。
② 被後見人の財産に関する法律行為についての代理権を行使します。
③ 被後見人の行った法律行為の取消権を行使します。

生活・療養看護に関する注意事項
被後見人の財産・収入等を把握し、医療費・税金等の決まった支出を概算し、療養看護の計画立案・収支予定を立てる必要があります。
また、被後見人の療養看護が長期に亘る場合、中長期的な展望に立ちながら最善の療養看護ができるように計画しなければなりません。

財産管理に関する注意事項
1. 成年後見人選任の審判があった後、1か月以内に被後見人の財産を調査し、財産目録を作成して家庭裁判所に送付する。
2. 被後見人の財産を後見人や第三者の財産と混同してはならない。被後見人名義の財産を後見人個人名義にすることはできません。
3. 被後見人の財産に損害を与えないように安全な方法で管理しなければならない。
4. 被後見人の財産から支出できるものは、原則的には、被後見人の生活・療養看護に関する費用に限定されます。
5. 被後見人の収入・支出について、金銭出納帳を付け、領収証等の資料を保管します。また、一定期間ごとに、収支のバランスがとれているかチェックして、定期的に家庭裁判所に財産目録を提出し、後見事務について報告しなければなりません。
6. 被後見人居住用の不動産について、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定等の処分をする場合、事前に家庭裁判所に対して、「居住用不動産の処分についての許可」の申立てをして許可を得る必要があります。
7. 後見人と被後見人がお互いに遺産分割や賃貸借等の当事者になるなど、利害が対立する(利益相反関係にある)ときには、「特別代理人選任」の申立てをする必要があります。

成年後見人等の職務は本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られています。(食事の世話や実際の介護等は成年後見人の職務ではありません)例えば、
① 不動産や預貯金等、財産の管理
② 遺産分割等の協議をする時
③ 介護サービスの契約・施設への入所等、契約をする時
④ 悪徳商法等の不利益な契約を取り消す時

<実例>例えば、こんなときに成年後見制度が効果的。

①脳卒中で入院した親に代わり、所有の不動産を売却(賃貸)し、入院費用等に充当することができた。
② 認知症の母が訪問セールスの悪徳商法に騙され、高額な商品を買わされたが、その契約を取り消すことでお金を取り戻すことができた。
③知的障害の持った子どもが自らの親の死亡後も普段の生活や財産管理等を安心して任せることができた。
④ 母が認知症になり、判断能力がなくなった時、成年後見人を選任して遺産分割協議をまとめることができた。

保佐人の仕事内容

① 同意見・取消権
被保佐人が民法第13条第1項各号の行為をするとき、保佐人の同意が必要です。また、家庭裁判所は同条同項以外の事柄についても、申立てにより、同意権を付与することができます。
保佐人の同意なくして行われた行為については、保佐人及び被保佐人はこれを取り消すことができます。また、被保佐人だけで行った行為について、これを追認することもできます。(追認とは、後から有効であると認めることを言います)

② 代理権
家庭裁判所が定めた特定の法律行為につき、被保佐人に代わってこれを行うことができます。対象となる行為には法律上の制限はないですが、被保佐人以外の者からの請求に依るときは、被保佐人の同意が必要となります。

保佐人は、被保佐人の利益になるように適切な同意を与え、被保佐人に不利益な行為を取り消すことに依って被保佐人を保護し、その権利を守る立場にあります。加えて、審判で認められた範囲内で代理権を持ち、この限度で被保佐人の財産管理権等を持つことになります。

民法第13条第1項に定められた法律行為
1. 貸した土地、建物、お金を返してもらったり、これらを他人に貸したり預けたりすること
2. お金を借りたり、他人の保証人になること
3. 不動産や高価な財産を売買いしたり、貸したり、担保をつけるなどすること
4. 訴訟を起こしたり、訴訟を取り下げたりすること
5. 贈与、和解をしたり、仲裁契約をすること
6. 相続を承認、放棄したり、遺産分割をすること
7. 贈与や遺贈を断ったり、何かを負担することを条件とした贈与や遺贈を受けることを承諾すること
8. 新築、改築、増築、大修繕の契約をすること
9. 宅地を5年以上、建物を3年以上、動産を半年以上に亘り貸す契約をすること


③ 居住用不動産の処分について
被保佐人の居住用不動産について、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定等の処分をするときは、事前に家庭裁判所に「居住用不動産の処分についての許可」の申立てをして許可を得る必要があります。

④ 臨時保佐人の選任
保佐人と被保佐人がお互いに遺産分割や賃貸借等の当事者になるなど、利害が対立する(利益相反関係にある)ときには、「臨時保佐人選任」の申立てをする必要があります。

補助人の仕事内容

① 同意権・取消権
補助人は被補助人が民法第13条第1項各号の行為のうち、被補助人の同意があり、家庭裁判所が審判で定めた法律行為をするに際して同意見を有します。補助人の同意なくして行われた行為についてはは、補助人及び被補助人はこれを取り消すことができます。また、被補助人のみで行った行為については、これを追認することもできます。
② 代理権
家庭裁判所が定めた特定の法律行為につき、被補助人に代わってこれを行うことができます。対象となる行為には法律上の制限はないですが、被補助人以外の者からの請求によるときは、被補助人の同意が必要です。

補助人は、被補助人の利益になるように適切な同意を与え、被補助人に不利益な行為を取り消すことに依って被補助人を保護し、その権利を守る立場にあります。加えて、審判で認められた範囲内で代理権を持ち、この限度で被補助人の財産管理権等を持つことになります。

③ 居住用不動産の処分について
被補助人の居住用不動産について、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の
設定等の処分をするときは、事前に家庭裁判所に「居住用不動産の処分に
ついての許可」の申立てをして許可を得る必要があります。

④ 臨時補助人の選任
補助人と被補助人がお互いに遺産分割や賃貸借等の当事者になるなど、利害が対立する(利益相反関係にある)ときには、「臨時補助人選任」の申立てをする必要があります。

家庭裁判所による後見・保佐・補助監督について

家庭裁判所は、被後見人等の利益が十分に守られるように、後見等の事務を監督することになっています。定期的に、或いは、随時、後見等の事務に関して報告を求めたり、調査をしますから、日頃からそれに備えておく必要があります。
被後見人等の生活状況の大きな変動(入院、転居等)、大きな財産処分、高額な物品の購入、遺産分割等がある場合、事前に家庭裁判所に連絡し、その指示を受けることになります。

後見人・保佐人・補助人の報酬付与について

後見人等の報酬は、家庭裁判所の審判があってはじめて認められることになります。この場合、家庭裁判所に「報酬付与」の申立てをする必要があります。

後見人・保佐人・補助人の任務終了について

後見人等の任務は、後見人等の辞任(家庭裁判所の許可が必要)、解任、後見開始審判の取消、被後見人等の死亡により終了します。その場合、2か月以内に後見人等として行った被後見人等の財産管理の計算を家庭裁判所に報告します。

後見人・保佐人・補助人の責任について

不適切な財産管理、家庭裁判所の求めた財産目録を提出しない、家庭裁判所の呼び出しに応じないなどの後見人等として不適切な時は、辞めていただき、家庭裁判所が第三者専門家を後見人に選任する場合があります。
また、注意義務に違反し、損害が発生した場合、賠償を求められたり、後見人等が被後見人等の財産を使い込むなどした場合、悪質性があるとき、刑事上の責任を問われることもあります。

成年後見人等、任意後見人、任意後見監督人にはどのような人がなるのか

①配偶者、親族・知人
② 行政書士・司法書士・弁護士等の法律専門家
③ 社会福祉士等の福祉の専門家
④ その他の第三者
⑤ 社会福祉協議会、その他の法人

法定後見制度を利用するための手順

成年後見人等の候補者を検討 → 家庭裁判所に申立ての必要書類の準備
→ 本人の住所地にある家庭裁判所に後見等の開始の審判申立て
→ 家庭裁判所では調査・尋問⇒鑑定(後見・保佐)⇒審理⇒審判⇒確定
→ 家庭裁判所からの嘱託により法定後見の登記(東京法務局後見登録課)
→ 法定後見スタート

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Posted by 北村國博法務行政書士事務所 at 18:29 │成年後見制度について

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