2011年02月09日

任意後見について

一方、任意後見制度とは・・・

任意後見制度

予め契約を締結し選任しておいた任意後見人に、将来認知症や精神障害などで判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。

即ち、自らが選んだ代理人(任意後見人)に自分の生活、療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える契約を任意後見契約と言います。

委任契約の一種ですから、誰を任意後見人として選ぶか、その任意後見人にどのような代理権を与えてどこまで仕事をしてもらうかを本人と任意後見人(受任者)との話し合いにより自由に決めることができます。

任意後見契約は、任意後見契約に関する法律によって、必ず、契約は公正証書で作成しなければなりません。つまり、任意後見は、本人の意思のみならず、意思能力を確認する必要があるので、公証人が直接本人に面接することが必要となっています。

実際に本人の判断能力が不十分な状態になったときに、任意後見人が任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督のもとで、本人を代理して契約などすることによって、本人の意思に従った支援・保護を受けることが可能となります。

任意後見制度を利用するための手順

本人と任意後見受任者との話し合いにより、委任内容の決定 → 
本人と任意後見受任者が公正証書を作成 → 公証人からの嘱託により公正証書の内容登記(東京法務局後見登録課)
→ 本人の判断能力が不十分 → 家庭裁判所へ任意後見監督人選任の審判申立て⇒審判・確定 → 家庭裁判所からの嘱託により任意後見監督人の登記
→ 任意後見スタート

任意後見契約の3つの利用形態

「即効型」任意後見契約:任意後見契約締結後、直ちに家庭裁判所に任意後見監督人の申立てを行う形態の契約です。

「将来型」任意後見契約:本人の判断能力が低下する前に生活支援・療養看護・財産管理事務を行うことを内容とする委任契約を締結せずに、任意後見契約のみを締結し、判断能力低下後に任意後見人の保護を受けることを内容とする契約です。

「移行型」任意後見契約:契約に際し通常の委任契約を任意後見契約と同時に締結し、当初は見守り事務、財産管理等を行い、本人の判断能力低下後は任意後見に移行し、後見事務を行うという契約です。

移行型の委任契約の主な内容

① 委任契約の始期(開始時期)を定めます。
② 代理権の範囲を本人の生活に必要な限度に限定します。
③ 重要な事務処理には、委任者本人の同意を要するなど、監督的な立場の人の同意を要します。
移行型の基本的な契約内容は、見守り契約と財産管理が柱になります。

注意事項

① 認知症=意思無能力ではないが、本人の判断能力がなければ、契約はできない。最終的には、公証人が個別的に意思能力の程度等を判断し、公正証書が作成できるか決定します。
② 公証人は任意後見契約公正証書を作成するに際し、本人と直接面接して契約の意思及び意思能力を確認します。
③ 本人の意思能力に疑問があるときは、医師の意見を聞くなど、医師の診断書の提出を求めます。
④ 任意後見人は誰でも成人であればなることができます。
⑤ 行政書士、司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門家や社会福祉協議会、社会福祉法人などの法人を「専門職後見人」として選任することができます。
⑥ 任意後見人の職務は限定できます。
⑦ 2名以上の任意後見人と異なる業務内容で契約することができます。
⑧ 家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から任意後見契約の効力が発生します。
⑨ 任意後見人が金融機関で円滑に事務を行うには、任意後見開始の届出が必要である。届出には、任意後見登記事項証明書の提出が求められています。

任意後見人の職務

職務範囲は、当事者の合意によるものであり、当事者の社会的地位、生活状況、財産状況、契約締結の動機・目的などによって異なります。
委任者の意図を十分加味し任意後見人の職務範囲を決めることになります。

職務内容の一般的な例

① 財産の保存・管理
② 金融機関との預貯金取引
③ 定期的な収入の受領、定期的な支出・費用の支払い
④ 生活費の送金・生活に必要な財産の購入
⑤ 借地・借家契約に関すること
⑥ 遺産分割等の相続に関すること
⑦ 保険契約に関すること
⑧ 各種登記の申請、住民票・戸籍謄本・登記事項証明書その他行政機関発行の証明書の請求・受領
⑨ 郵便物の受領
⑩ 要介護認定の申請、認定に関する承認・異議申立て等に関すること
⑪ 有料老人ホームの入居契約を含む福祉関係施設への入所契約、その他の福祉関係の措置に関すること
⑫ 国・都道府県等の行政機関への申請、行政不服申立て
⑬ 居住用不動産の修繕に関すること
⑭ 医療契約、入院契約に関すること
⑮ 紛争処理のための裁判外和解(示談)、仲裁契約及び弁護士に対して訴訟行為及び特別授権事項について授権すること
⑯ 復代理人の選任及び事務代行者の指定に関すること

任意後見契約公正証書作成に際して準備するもの

① 本人の印鑑登録証明書、戸籍謄本又は抄本、住民票
② 任意後見人となる者の印鑑登録証明書、住民票
③ 法人の場合、印鑑証明書、登記事項証明書(いずれの証明書類の有効期間は、発行後3か月以内)
④ 不動産の財産管理があれば、対象の土地建物の登記簿謄本

任意後見人や任意後見監督人の報酬

任意後見契約は委任契約であることから、報酬を支払うことでも無償でも構わない。専門職(行政書士等)が任意後見人になる場合、その報酬については、その金額や支払い方法は全て契約で決めることになります。
但し、任意後見監督人には報酬が支給されるが、その報酬額は選任した家庭裁判所が決めることになります。

事務処理費用の支払い

財産管理や療養看護の事務処理に係る費用は、任意後見人が管理する本人の財産から支出することになります。

任意後見監督人の選任手続き

任意後見監督人の選任手続き任意後見監督人を選任するには、任意後見人になることを引き受けた人(任意後見受任者)、本人の四親等内の親族又は本人自身が家庭裁判所に選任の申立てを行います。
任意後見監督人は、任意後見人の事務処理が適正に行われているかを本人に代わってチェックします。

任意後見監督人の具体的な職務

任意後見監督人は、任意後見人からその事務処理状況報告を受け、これに基づき任意後見人の事務処理状況を家庭裁判所に報告し、その指示を受けて任意後見人を監督する。任意後見人の代理権の濫用を防止するのが狙いです。

任意後見契約は登記される

公正証書により任意後見契約を締結すると、誰が誰にどのような代理権を与えたかという契約内容が公証人の嘱託により登記されます。
この登記(後見登記)が完了すると「登記事項証明書」の交付を受けることができます。
任意後見人は、任意後見契約の効力が発生すると、この「登記事項証明書」により、本人のために一定の代理権を持っていることを証明することができます。

任意後見契約の解除等について

家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前なら、いつでもどちらからでも契約を解除することができます。この場合、公証人の認証のある内容証明郵便を相手方に送付して通告することが必要。
或いは、双方合意の上、契約を解除することもできますが、公正証書又は公証人の認証を受けた書面によることが必要です。

任意後見監督人が選任された後には、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を受けて解除することができます。
任意後見人に不正行為や任務に適しない事由がある場合、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができます。

任意後見契約の内容変更

代理権に関する内容について、代理権を行う事務範囲を拡張する場合、新たに任意後見契約を作成するか、又は拡張した代理権のみを付与する任意後見契約の公正証書を作成します。
代理権を行うべき事務の範囲を縮減する場合、全部解除した上で、新規の任意後見契約書を作成します。
報酬の額等を変更する場合、公正証書により変更契約いたします。
任意後見人の変更の場合、既存の契約を解除し、新たな契約を締結いたします。

任意後見契約と尊厳死宣言

任意後見人の責務として、後見事務を行うに当たり、本人の意思を尊重しなければならないとしています。
(法律第6条)
本人が延命措置を希望しない旨の意思表示をしている場合、任意後見契約に際して、その旨を記載した本人作成の書面を提出し、これを尊重して欲しいとする任意後見契約を締結することができます。

任意後見と遺言

任意後見人の苦労に報いるため、任意後見契約を締結すると同時に公正証書遺言を作成し、任意後見人に多くの財産(遺産)を相続させることや或いは、遺贈する場合があります。
遺言は、本人が構築した大切な財産を誰に託するかを自由な意思で決めること。無用な相続争いを防ぎ、遺言者を親身になって支えてくれた配偶者や自らを犠牲にしてまで支えてくれた近親者・知人等に対して、その恩に報いるかなどを考慮して作成するものです。

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Posted by 北村國博法務行政書士事務所 at 19:07 │任意後見について

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